スパゲッティ―は昭和の味
スパゲッティは茹で上げを食べるものだということを日本中が知らず、アルデンテという言葉も、パスタなんて言葉もなかった頃、学生たちにとってスパゲティと言えば、フライパンで炒めたスパゲッティーナポリタンでした。それは部活帰りに寄る、いつもの喫茶店で空腹を満たしてくれるご馳走でもありました。味付けはトマトソースではなく、トマトケチャップ。炒められたケチャップの「ツン」と来る香りに食欲を刺激され、がっつくように食べていたのを思い出します。
そのスパゲッティーと再会を果たしました。御徒町駅北口改札のすぐそばにある「スパゲッティーのパンチョ」。ナポリタンとデカデカと書かれた看板が目印です。当時のように、柔らかめの太麺をフライパンでしっかり炒め上げたスパゲッティーを出す店で、地下に続く階段を降りていくと「ナポリタンとミートソースがあればいい」との張り紙に目が行きます。そう言えば、あの頃はスパゲッティーと言えば2種類だけ。さらに蘇る学生時代の記憶とともに、あの味を楽しめると思うと期待が高まります。
当時のようにフォークに大量の麺を巻きつけて口の中に運びます。ケチャップの酸味に、少しむせるようになるのが懐かしく、そして口一杯に広がるケチャップ味が昭和の記憶を呼び起こします。旨いかどうかが問題なのではなく、あの頃と同じ味かどうかが問題。そして、間違いなく、あの頃、大学の正門前にあったトリコロールという喫茶店で食べていたものと同じ味でした。気が付けば、400gのナポリタンは、あっという間に胃袋の中へと消えていきました。
パンチョは渋谷、池袋にも出店していて、昭和の味と雰囲気を提供するのがコンセプト。店内はまさにあの頃の学生が通う喫茶店と同じで、ポスターもBGMも昭和の空気を感じさせるものばかりです。ケチャップが染みになったボロボロの漫画の単行本を読みながら食べていると、学生時代にタイムスリップした気分になります。そして、スパゲティではなく、もちろんパスタでもなく、スパゲッティー。それは青春時代を思い出させてくれる懐かしい味でした。
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