フットボールな日々
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中倉一志

Author:中倉一志
Jリーグ登録フリーランスライター
福岡に住み、アビスパ福岡をはじめ九州のサッカーを中心に取材活動を続けている。「サッカー」と名前さえつけば、どんなカテゴリーでも見ることを信条としている。

[掲載媒体・出演番組等]
 KBC(九州朝日放送)テレビ・ラジオ
 天神FM「バモス・アビスパ」
 週間「サッカーマガジン」
 サッカー専門新聞「EL GOLAZO」
 アビスパ福岡イヤーブック
 Jリーグファンサイト「J's GOAL」
 sports navi「コラムコーナー」
 online magazine 2002world.com
 他、多数

お仕事のご依頼がございましたら、是非お声かけ下さい >>> mail to



 

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敗れるべくして敗れた徳島戦
この2時間後、スタジアムは歓声に包まれた

「力のある湘南、福岡に勝てばサポーターにも喜んでもらえるし、チームとして自信にもなる。自分の中では、今後を見据えた中での大一番になると思っていた」(美濃部監督)。その徳島が用意した戦い方は、リトリートした体制から福岡のロングボール、クロスボールをしっかりと跳ね返して、拾ったセカンドボールをシンプルにドゥンビアに預けてスピードでかき回すというもの。その徹底した戦術に福岡は見事にはまってしまいました。

 もちろん、徳島の出方は事前に十分に予想されていたもので、「ドゥンビアにスペースを与えないようにすること。そのためには彼へのマークも大切だが、そこへ行くパスを狙ってインターセプトすること」(リトバルスキー監督)が、この日の福岡の狙いでした。そのために、中盤をコンパクトに保って相手の中盤にプレッシャーをかけること、いわば、愛媛戦と同じ戦いをすることを確認していました。しかし、それは90分間を通して一度も見られませんでした。

 立ち上がりから運動量もスピードも上がらず、中盤でプレスに行くこともない。前に出ようとする前線と、ドゥンビアを怖がって下がる最終ライン。そして、相手が待ち構えるところへロングボールを蹴っては、それを跳ね返され、間延びした中盤にこぼれるボールをことごとく拾われて、徳島の攻撃にさらされるパターンを繰り返しました。ボールホルダーに対してプレスをかけなければ自在に蹴られるのも当たり前。ドゥンビアの走るコースを開けたままで待ち構えていたのでは止められるわけもありませんでした。

 また、失点シーンは昨シーズンのパターンの繰り返し。あれだけノーマークでシュートを打たれてしまっては吉田宗弘にはノーチャンスでした。中盤を活性化するために途中から出場した田中佑昌は運動量も仕掛ける姿勢も足りず、懸命にボールを追う姿勢は見せた城後寿もチームにフィットしないままでした。「こういう戦いをしていては負けてしまう」(久藤清一)。結果云々を語る前に、やるべきことを何一つやらなければ試合にすらなりません。技術・戦術以前の問題。番狂わせでも何でもなく、負けるべくして負けた試合でした。

 経験のあるベテランが加わり、言いたいことを言いあえるようになったチームには、ゲームの流れを読み、要所を抑える力が着いたと思っていました。ところが、連携もなければ、修正する姿勢も見せず、ただ同じことを90分間繰り返しての敗戦。それは、ズルズルとJ1昇格レースから脱落していった昨シーズンの戦いと同じものでした。まだ先が長いことが唯一の救いですが、これを単なるひとつの敗戦と捉えたら取り返しのつかない事態を招きます。次の試合にチームの姿勢が問われることになりました。


ニンジニアスタジアムでの試合で
開場を待つニンジニアスタジアム

 週末は取材仲間と車をチャーターして四国横断取材旅行の旅へ出かけていました。5日未明に福岡を出て、「瀬戸内しまなみ街道」の周りに広がる風景を楽しみ、四国の山々に広がる満開の桜を満喫。飛行機で行く遠征とは違った気分を味わいながらの道中となりました。途中でゆっくりと休憩をはさんで8時間の旅。たまには、こういう移動も楽しいものです。アウェーで取材する試合は格別なものがありますが、そこへ行くまでの道のりもまた楽しいものです。

 さて、初日の愛媛vs.鳥栖は1−2で鳥栖が勝利しましたが、鳥栖にとっては課題を残す内容だったように思います。主導権を握って試合を進めながらも、運動量は少なく、ミスは多く。試合展開も前節の熊本戦同様、要所を締めきれないことで最後まで愛媛に反撃の余地を許すなど、今後の戦いに不安が残る面もみられました。しかし、それでも勝ち点を奪うのが今シーズンの鳥栖の粘り強さ。課題のある戦いも、昨シーズンまでとは違うチームであることを改めて感じました。

 この試合で個人的に注目していたのは谷口堅三でした。入団2年目の若干19歳のFW。アミーゴス鹿児島出身で、U-16日本代表候補に選出された経験を持つ選手です。第2節のC大阪戦ではワールドクラスのゴールを決めて勝利に大きく貢献しましたが、この試合でも勝負を決定づける2点目をゲット。荒削りではありますが、堂々とした態度と、ゴールを狙う姿勢、そして、ボディバランスの良さは、これからが大いに楽しみな選手であることを確信させてくれました。

 試合後に話を聞きましたが、チーム戦術や自分の役割、そして自分のプレーについて、自分の言葉で明確に説明する態度は19歳とは思えませんでした。そして、言葉の端々からは、サッカーにも、周りの人間にも、真摯に接していることが伝わってきました。この日のゴールに対するコメントを求めると、「あの2点目は、その前にボールを奪ってくれた人がいて、それを拓馬さん(日高)に出してくれた人がいて、拓馬さんが滑りながらも折り返してくれました。あとは決めるだけだったので、そういう人たちがいてくれたからのゴールだったと思います」と答えてくれました。

 プロスポーツ界で成功を収めるためには、技術、体力が高いレベルにあるだけでは足りません。コミュニケーションスポーツの代表であるサッカーでは、選手の人間性がプレーヤーとしての成否に大きくかかわってきます。自分を客観的に知り、自分を生かしてくれる環境へのありがたさを忘れず、常に前向きな姿勢と向上心を持ち、どんなことにも真摯に向きあえること。それがプロとしての成功の必要条件です。鳥栖はいい選手を育てているなと感じました。